
作業着のクリーニング代は、会社と従業員のどちらが負担するのが正しいのでしょうか。
現場から質問されても社内に明確な決まりがなく、答えに詰まってしまった経験のあるご担当者は少なくありません。
一般的な作業着について、クリーニング代の負担者を一律に定める法律はなく、判断は各社に委ねられています。
本記事では、会社負担と従業員負担を分ける判断基準と、就業規則への落とし込み方までを整理して解説します。
作業着のクリーニング代は会社負担が義務?法律上の考え方
先に要点を整理します。
- ・一般的な作業着のクリーニング代に、一律の会社負担義務はない
- ・従業員に負担させる定めを置くなら、労働条件として明示する
- ・常時10人以上の事業場では、就業規則への記載が必要
- ・給与から天引きするなら、賃金控除に関する労使協定が必要
- ・有害物を扱う一部の業務では、事業者に汚染除去の措置義務がある
一般の作業着に一律の会社負担義務はない
労働基準法にも労働安全衛生法にも、一般的な作業着のクリーニング代を会社が負担しなければならないと定めた条文はありません。
そのため、全額会社負担・従業員負担・一部補助のどの形を選ぶかは、各社の判断にゆだねられています。
実際の運用も、製造業や整備業では会社負担、飲食や小売では従業員負担というように、業種や汚れ方によって分かれています。
ただし、有害物質を扱う一部の業務では、作業衣の汚染除去などを事業者に義務づける個別規則があります。
従業員負担にするなら「どこに書いてあるか」が問われる
負担者を自由に決められる一方で、決めた内容をどこに残すかについては法律上の要件があります。
労働基準法施行規則第5条第1項第6号は、労働条件の明示事項として「労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項」を挙げています。
つまり、従業員に負担させる定めを置くのであれば、事業場の人数にかかわらず労働条件として明示することが前提になります。
さらに、常時10人以上の労働者を使用する事業場では、労働基準法第89条第5号により「労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項」を就業規則に記載しなければなりません。
規定がないまま慣習で負担させている状態は根拠を示せないため、指摘を受けたときに説明ができません。
参考:e-Gov法令検索「労働基準法」/e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」
会社負担・従業員負担を分ける4つの判断基準
法律が負担者を決めていないということは、自社の実態に合わせて決めるということです。
担当者や拠点によって判断がぶれないよう、次の4つの軸で整理しておくと現場への説明もしやすくなります。
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| 判断軸 | 会社負担が妥当なケース | 従業員負担も成立するケース |
|---|---|---|
| 汚れの性質 | 機械油・薬品・粉じんなど、 業務でしか付かない汚れが中心 |
汗や軽い皮脂汚れが中心で、 家庭洗濯で足りる |
| 着用の指定度 | 会社が指定・貸与し、 着用を義務づけている |
私服に近く、 着るものに一定の自由度がある |
| 自宅洗濯の可否 | 家庭用洗濯機では落ちない、 持ち帰りに衛生上の懸念がある |
家庭で問題なく 洗える素材・汚れである |
| 待遇としての 位置づけ |
人材確保が難しく、 待遇の差が採用に響く職種 |
作業着手当などで 費用を補える仕組みがある |
左側に当てはまる項目が多いほど、会社負担とする合理性を説明しやすくなります。
有害物を扱う現場は会社負担が原則
業務で有害物を扱う現場では、そもそも「洗うこと」自体が事業者の義務になる場合があります。
たとえば鉛中毒予防規則第50条第1項は、鉛業務に労働者を従事させるときは「洗濯のための設備を設ける等作業衣等の鉛等又は焼結鉱等による汚染を除去するための措置」を講じなければならないと定めています。
こうした現場で従業員に自宅へ持ち帰って洗わせる運用は、家族への二次的な汚染につながるおそれがあるため避けるべきです。
有害物に該当しない機械油や塗料の汚れでも考え方は同じで、業務でしか付かない汚れを落とす費用は業務上のコストと捉えるほうが筋が通ります。
会社貸与の作業着は維持管理の主体を明確にする
もう一つの分かれ目は、作業着を貸与しているのか、本人が購入して所有しているのかという点です。
会社が所有・管理する貸与品であれば、使える状態に保つための費用も会社側で持つという整理が自然に成り立ちます。
従業員負担にする場合の3つの法務・運用チェック
従業員負担という判断そのものは違法ではありませんが、手続きを飛ばすと後から覆されるリスクがあります。
法的な要件と、実務として整えておきたい点を分けて確認しましょう。
就業規則に負担の範囲と方法を明記する
「クリーニング代は自己負担とする」という一文だけでは、金額の上限や対象範囲をめぐって解釈が分かれます。
対象となる雇用区分や職種、対象アイテム、上限額まで具体化しておくと、現場での運用がぶれません。
給与から控除するには労使協定が必要
見落とされやすいのが給与からの天引きです。
労働基準法第24条は賃金の全額払いを原則としており、法令に定めのあるもの以外を控除するには、事業場の過半数組合または過半数代表者との書面による協定が必要です。
就業規則に「自己負担とする」と書いてあるだけでは、給与から差し引く根拠にはなりません。
控除の対象と金額を明確にし、合理的な範囲で運用することが前提になります。
入社時に書面で伝え、記録を残す
就業規則は、作成して届け出るだけでなく、労働者に周知されていることが前提になります。
法律上の義務ではありませんが、労働条件通知書や貸与品の受領書に費用負担の記載を入れ、本人の署名を残しておくと、後から「聞いていない」という争いを避けられます。
3つを整理すると、次のとおりです。
- ・労働条件として負担のルールを明示(労働基準法施行規則第5条第1項第6号)
- ・常時10人以上の事業場では就業規則に記載(労働基準法第89条第5号)
- ・給与天引きをするなら賃金控除に関する労使協定(労働基準法第24条)
社内ルールに定める5項目と規定文例
方針が決まったら、規程の文言に落とし込みます。
方針別の書き方の骨格を整理しました。
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| 方針 | 規定文例(就業規則・貸与規程) |
|---|---|
| 会社負担型 | 会社は、貸与した作業着のクリーニングを会社の費用負担において行う。 従業員は、会社が指定する方法および頻度により、作業着を回収に供するものとする。 |
| 従業員負担型 | 従業員は、貸与された作業着を清潔に保つものとし、 そのクリーニングに要する費用は従業員の負担とする。 |
| 一部補助型 | 会社は、作業着のクリーニング費用について、 従業員1人あたり月額○○円を上限として負担する。 上限を超える費用は従業員の負担とする。 |
いずれも骨格のみを示したもので、実際に規程へ反映する際は不利益変更の手続きを含め、社会保険労務士に確認したうえで整備してください。
決めておくべき5項目
方針だけを決めても、現場での運用は回りません。
以下の5項目まで決めておくと、担当者が変わっても同じ判断ができます。
- ・対象者(雇用区分・職種の範囲)
- ・回収の頻度とタイミング
- ・1人あたりの枚数・金額の上限
- ・退職時の返却方法と期限
- ・汚損・紛失時の取り扱い
とくに枚数・金額の上限は、会社負担型で費用が想定を超えて膨らむのを防ぐ歯止めになります。
費用処理は科目を決めて継続する
会社が負担したクリーニング代は、福利厚生費や消耗品費などで処理されることが多い費用です。
どの科目に統一するかは会計方針によるため、税理士に確認したうえで継続して同じ科目を使うのが基本です。
なお、私服と兼用できる衣類が関係する場合は、費用負担の扱いによって給与として扱われる可能性もあるため、運用を決める前に確認しておくと安心です。
退職時の作業着クリーニング代は誰が負担する?
費用負担の話がもっとも表面化しやすいのは、退職時の貸与品返却の場面です。
「クリーニングして返却」を求めるなら規定が必要
退職者にクリーニング済みでの返却を求めている会社は少なくありません。
しかし、就業規則・雇用契約・貸与規程などに根拠がない場合、当然に退職者へ費用を負担させられるとは言い切れません。
規定がないまま実費を請求したり最終給与から差し引いたりすると、前述の賃金全額払いの問題にも直結します。
実務では会社が回収して一括洗浄したほうが早い
退職者の作業着だけを別扱いにすると、確認や督促の手間が総務側に積み上がります。
定期回収のサイクルに乗せて会社側で洗浄してしまえば、費用は把握しやすくなり、退職者との交渉も発生しません。
名鉄クリーニングのユニフォームクリーニング|名古屋・愛知エリアの対応
名鉄クリーニングでは、名古屋市・豊田市・春日井市・岡崎市など愛知県を中心に、法人向けのユニフォームクリーニングに対応しています。
会社負担での運用に切り替える場合も、回収から納品までを定期サイクルに乗せてご利用いただけます。
- ・週2〜6回の定期回収から選べる集配対応
- ・作業着の機械油・食品油など油汚れへの対応
- ・ラベル管理によるユニフォームの状態・在庫・履歴の可視化
- ・国家資格を持つクリーニング師19名体制での品質管理
- ・全商品への抗ウイルス・抗菌加工
料金はアイテムの種類・点数・回収頻度によって変わるため、個別のお見積もりでご案内しています。
よくある質問
作業着のクリーニング代の負担について、ご担当者からよくいただく質問をまとめました。
Q1. 就業規則に何も書いていない場合、従業員に負担させられますか?
A:常時10人以上の労働者を使用する事業場では、負担させる定めは就業規則の記載事項にあたります。
記載がないまま負担させている場合は、まず規定を整備し、周知したうえで運用を始めるのが安全です。
すでに会社負担で運用してきた実態がある場合、従業員負担への変更は不利益変更として手続きに注意が必要です。
Q2. 会社負担にすると全額を負担しなければなりませんか?
A:いいえ、上限額を設けて一部のみ補助する形も選べます。
月額や枚数の上限を就業規則に明示しておけば、費用が想定を超えて膨らむことを防げます。
Q3. 退職者にクリーニング代を請求できますか?
A:請求の可否は、就業規則や貸与規程、雇用契約の内容、周知の状況などによって判断されます。
また、最終給与から一方的に差し引くには賃金控除に関する労使協定が必要です。
実務上は、会社側で回収して洗浄するほうがトラブルは起きにくくなります。
Q4. 作業着のクリーニング料金の相場はいくらですか?
A:汚れ方やアイテムによって幅がありますが、作業着は上下セットで1,000〜1,900円程度が目安です。
アイテム別の相場や費用を抑える方法は、関連記事で詳しく解説しています。
まとめ|「誰が払うか」より「どこに書いてあるか」
作業着のクリーニング代は、法律で負担者が決められているわけではありません。
そのため争点になるのは「どちらが正しいか」ではなく、「社内の規定にどう書かれているか」です。
従業員負担にするなら労働条件としての明示と、常時10人以上の事業場では就業規則への記載が必要で、給与から控除するならさらに労使協定が求められます。
有害物や機械油など業務由来の汚れが中心の現場では、会社負担としたうえで定期回収に乗せるのが、法令面でも運用面でも無理のない形です。
判断に迷ったときは、自社の作業着が貸与なのか自己所有なのか、そして規程に何と書いてあるかを確認するところから始めてみてください。

